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icon of Amane Katagiri 小動物以外ぜんぶ食う

日頃からストレスを溜めて現代社会を生き抜いているみなさまにおかれましては、時折ふとこんなことを考えてしまうはずです。

「あぁ、小動物を手に乗せて撫でたい……気分が乗ってきたら食べてしまいたい……」

……なんて。どうですか? 当たった? 当たってない? どっち? はっきりしませんね……あ、もう電話切れてる――

さて、中央アジアから西アジアが原産といわれる「ハムスター」というキヌゲネズミ科の可愛らしいネズミがいます。夜行性のかれらは、野生では一晩に10km~20kmほど走り回りながら生活していると言われており、非常に発達した筋肉を持っています。ハムスターが回し車でウチの電力を支えてくれているのは、この習性によるものです。

キヌゲネズミ(絹毛鼠)科という名前の通り、毛艶のよい毛皮に包まれた小さな身体は、忍耐強く人に慣らせば手にも乗ってくれるでしょう。しかし、個体値や種族値によって上手くいかないことも多いですし、慣らすためにケージを開けて……そのまま家の中に大脱走されてしまった経験のある方もいると思います。

全速力で逃げ回るハムスターを追いかけ、どうにかお母さんと挟み撃ちで追い込んで、なんとか捕まえようと手を伸ばす……手元が狂って、思ったより強い力でハムスターを掴んでしまったあなたは、きっとこんなことを思ったはずです。

「あっ、ハムスターって以外と固くてコリコリしてる。えっ、めっちゃ じゃん……こわ……」

……あぁ、これは当たるんだ。そっか。

ハムスターはその筋肉と骨格の割に毛皮が薄く、しっかりと触れるとそういう 大事な臓器っぽい何か を意識してしまうものです。腫瘍や水が溜まっている感触ではなく、そこに小さく生きている何かの気配。

つまり、私たちが 小さな命 を感じる瞬間はこういうときみたいです。

  • 表面は柔らかくてふわふわして、握りつぶしたら消えてしまいそうです!
  • 触ってみると中に固いところがあって押し返してきます。これでは握りつぶせません!

実はここに、生きて動き回るという条件はありません。必要もありません。硬・軟があるというだけ。君が生きてなくてよかった。少なくとも、私たちの尺度では。もしそうなら、冒頭のあなたの願いも叶うはずです。あなたはなんて言っていたんでしたっけ? そうです――

「あぁ、小動物を手に乗せて撫でたい……気分が乗ってきたら食べてしまいたい……」

言ってないって顔ですね。まぁどちらでもいいです。

足立区に本社のある和菓子屋の喜田家が、主に東京スカイツリータウンの東京ソラマチ店で販売している「空 de 餅」は、こうした小動物無生物フェチのみなさんを救うお菓子のひとつです1公式サイトの説明を引用しますね。

卵白ともち米で作った、ふわふわととろけるような風味のお菓子。空に浮かぶ雲を彷彿とさせる見た目に、蜜煮の豆がアクセントです。
商品情報|喜田家 -和菓子スイーツのどら焼き・千丸・すずめ・最中・酒合戦-

卵白(メレンゲのことです)とゼラチンを餅に混ぜ合わせて、金時豆を入れて固めたお菓子。硬・軟があるというだけ。とっても気になりますね。

空 de 餅のパッケージ

空 de 餅が透明なトレイに収まっている様子

空 de 餅を取り出して皿に置いた様子

かわいいですね! 透明な四角い枠に押し込められて、均一な姿で袋詰めされて出荷される……ウチのハムスターではこうはいきません。もしかしたら、もっと巨大な雲みたいなオモチの塊を切り分けてこの小動物が生まれたのかもしれません。

今は1個しか写っていませんが、これが工場にたくさん並べられて等間隔に流れているところを想像してみてください。回し車の箱に押し込められて動き回るのもいいでしょう。

空 de 餅が立ち上がってこちらを威嚇しているように見える様子

威嚇。

触感と食感については、もう大満足でした。手に乗せたときの餅取り粉のさらさらした感触、指でつまんだときの壊れそうなのにときどき芯を感じる壊れた生物感、噛み切ったときの無抵抗に取り込まれていく柔らかさ……もし家に電子レンジを置くのを許されているなら、10秒ほど温めると ホンモノ になります2

豆大福ですか? あれは粉だらけの固い塊です。レジ前にずっと置いてあったから、もう動かないね。

大福や団子、おはぎなどの餅菓子は、空 de 餅のようにメレンゲを混ぜたマシュマロのような生地や、砂糖や水あめで練り上げた求肥などとは全く異なります。もっと具体的な例を挙げていくと、羽二重餅にくるみを練り込んだものとか、指でつまむと形が戻らないマシュマロとか、みずき団子を作るときとか……いいえ、それは違います。

まぁ文字で語っても仕方ありませんから、店舗情報を確認の上で、もしお近くにいらっしゃいましたらぜひお立ち寄りください……というと、関東圏にしか人が住んでいないアド街みたいな世界観になってしまいますね。

では、もし富山県にお住まいの方がいれば、鹿の子餅本舗 不破福寿堂鹿の子餅がこの手触りと似ているかもしれません。私は食べたことがないのではっきりとは言えませんが、写真を見る限りわずかに空 de 餅よりは固い生地のように見えます。これもレンジで温めてしまえば些末な差でしょう。

……えっ、こっちは明治25年から売ってて、季節限定のピンク色もある? じゃあもう動き回るモンスターじゃないですか……空 de 餅は2012年から? 確かに、スカイツリーの開業より前にあるわけないもんね。じゃあ、どっちがどっちのジェネリックなんだろう……?

柔らかい生き物を食べたいという願いは人類共通なので、どっちが起源とかはもういいじゃないですか。みなさんも、柔らかくて芯のあるオモチをいっぱい並べて小動物生産工場を作ったり、工場長の気まぐれで食べちゃったりしましょう。ストレスを溜める必要はありません。明日のことは明日考えればいいのです。


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  1. オンラインショップにも商品情報はあったみたいですが、記事を書いたタイミングでは取り扱いがないみたいです。 

  2. ここでは実在性の高さ、生命感、アンドロイドキャラが涙を流す瞬間、人間の身体を手に入れておしゃれを覚えた瞬間などを指しています。 

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