僕には幼馴染がいて、僕よりずっと背が低い。
僕よりずっと背が低いのに、いつもお姉さんぶっていた。僕よりも1つ年上だから。
親同士の集まりをこっそり抜け出し、いつもふたりで遊んでいた。
女の子は男の子より成長が早いとはいうけど、彼女が僕の背を抜くことはなかった。
偉そうにしてる彼女の頭を上から撫でると、ちょっとだけ頬を膨らますのだ。
いつもふたりで。ずっとふたりで。
精通も初体験も、いつも彼女がそこにいた。
彼女の身体に性の目覚めを与えたのは、僕だ。
僕に射精の喜びを与えてくれたのは、彼女だ。
小さな身体を初めて汚したのは、僕だ。僕なのだ。
僕に恋の味を教えてくれたのは、彼女だった。
僕たちは別々の中学へ進んだ。彼女はいわゆるお嬢様だったから。
家こそ庶民感覚を忘れないようにとこじんまりとした家を建てたようだけど。
彼女は美しい女子校の制服を身に纏い、それは僕の汚れた欲望を惹起させた。
彼女は住む世界が違うんだ。彼女のことは忘れなさい。
そんな両親を尻目に、僕たちは隠れて会い続けた。
彼女は僕の前でだけは淫らだった。
清楚な制服から放たれる淫猥な言葉の数々に、僕は溺れていった。
彼女の部屋で、彼女のベッドを、彼女自身で汚していった。
「変かもしれないけど、好きなのよ」と彼女は言った。
僕は悔しくなった。イライラかムラムラかわからなくなった。
悔しさをそのまま肉欲に変え、僕は彼女と淫れ続けた。
いつしかそれは互いの両親にばれてしまい、僕らの密会は突然の幕引きを迎える。
結局、それからしばらく彼女に会うことはなくなった。
彼女と会えない後半の中学生活は、灰色そのものだった。
高校に入学しても、僕の彼女に対する想いは冷めなかった。
いろんな女性に告白されたけれど、全部断って。
それはもちろん彼女だって同じで。
僕は彼女の連絡先を知らなかった。
いつでも会えると思っていたからそんなことには無頓着だったのだ。
でも、部屋の窓を明けると、熱っぽい眼をした彼女がこっちに飛び込んできた。
互いの両親がいない隙を見ては、愛を確かめ合う日々。
連絡なんていらなかった。毎朝窓越しの視線でYESかNOかを伝え合った。
高校生になった彼女の性欲はどんどん増していっている。
中学生みたいな身体で、僕の上を跳ね回り、僕の下でいやらしく喘いだ。
「好きだから、抑えられなくなっちゃうの。どうしても」
僕は小さく頷いて、その気持ちを認めてやるのだ。
「嬉しいよ」
彼女は県外の大学に出ていった。僕は一浪して県内の大学に進んだ。
窓を開けても彼女はいない。日を遮る無機質な壁には諦めから来る溜息しか出ない。
大学生活はそれなりに楽しかった。
女っ気こそないけれど、それなりの友達とそれなりのサークルを見つけて生きていた。
彼女は女子大へと進学していったから、男の影はあまり心配していない。
彼女は連絡先を残していかなかったから、今どこで何をしているかはわからないけれど。
僕が刻みこんだ快楽を忘れられずに疼いている。僕の愛の言葉を待ち望んでいる。
そう考えだすと止まらなかった。
そんなある日、僕は彼女の連絡先を知ることになる。何の因果か必然か。
「僕だよ。幼馴染の」
「ずっと待ってた」
「すぐに会おう。またあの日みたいに愛し合おう」
「ずっと待ってた」
なおもメッセージは続いた。
「結婚するんです」
「だからもう」
僕の視界が涙で歪んだ。
「えぇ、あなたと」
あぁ! 運命とは何と素晴らしいのだろう! 離れた二人でも、結ばれることはできるのだ。
「私ね、幸せよ。あなたと永遠に一緒だって思うと」
「女子校に入ったのも悪くなかったわ。あなたと会えたんだもの」
「当たり前じゃない、昔も今も、あなただけよ」
「子供はできないけれど、それでもいいの。ずっと一緒よ」
彼女はずっと中学生のままだ。
結婚も妊娠もできないその身体で、僕に脚を絡め続けるのだ。
斜体も太字も何もかも、全てが思い通りだったら良い。
僕が美少女で、彼女の同級生で。
中学生のまま、二人で愛し合いたい。